これからお話しする事は、私や友人が実際に体験した事や、聞いた事ばかりです。

私には、霊感はありません。だから、何の前兆もなくそれは起きるのです。

信じるとか信じないとか、ウソとか本当とか、そんな事を論じても意味はありません。

だって現実に起こってしまった事なのですから・・・・。




第六話 :「病院は、どこですか?」



・・・・・病院・・・ここほど、この 類の 背景に ピッタリの 場所は ありません。

私の友人が、事故で入院中、自分以外誰もいない部屋なのに、夜中に人の息づかいが聞こえたとか ちょっと 怖いかな・・・と 思える話は、限りなく あります。



この話は、そんな話の中の一つです。




「怖かったぁ〜。」

コンビニに、買い物に行っていた敏夫が、帰って来るなり玄関先でヘタリこんだ。

「どうしたの ? 遅かったじゃない。」  さとみが、奥の部屋から顔だけ覗かせて聞く。

「遠回りして帰って来たんだよぉ。」

靴を 脱ぎ、買い物袋を テーブルの上に 投げ出すと、敏夫は 大きく 身震いを した。


「今さぁ、コンビニで スゲェ 怖い話 聞いちゃった。」・・・・・




夜十時 過ぎ、敏夫は、近くの コンビニまで 雑誌を 買いに行った。

買う本は決まっていたのだが、少し立ち読みをしてから お菓子と夜食用のラーメンをカゴに 入れ、レジまで 来た時、警官が 二人入って 来た。


「ヤな事に 出くわしたよ。」

警官の 一人が、コンビニの オーナーと 馴染みらしく、大声を 張り上げる。

「どうしたんだよ ?」  オーナーが 聞く。

「110番が あってさ。 すぐ そこの 泉病院まで 行って来たんだ。

そしたら、病院の前にある公衆電話のボックスの中で、男が一人うずくまってたんだ。」



泉病院は、敏夫の家への帰り道にある。救急指定病院で、この町では結構大きな病院だ。

警官が 、気味悪そうに 話すのだが、その声が あまりに 大きいため、嫌でも 耳に 入って きてしまう。

敏夫は、買った物の 代金を 払いながら、警官の 話に 聞き入った。



110番は、その男がしたんだけれど、それが 変な事 言うんだな。

家へ 帰る途中、病院の 前まで 来たら、おばあさんに 呼び止められたってさ。

・・・見ると、浴衣一枚でスリッパ姿。それで、そのおばあさんが、『泉病院は、どこですか ?』って・・・・。


『泉病院なら、おばあさんの後ろにあるのがそうですよ。』って答えたら、『ありがとうございました。』って頭を 下げて、そのまま 病院の 壁に す〜っと・・・。」



「その 男、腰 抜かして、110番 してきたって 訳なんだよ。」

「ぇ〜っ、ホントの 話かい ?」

オーナーは、苦笑いしながら、首を すくめて 言った。


「信じられないだろ ? 俺も そうだったんだよ。

こいつ、酔ってイタズラしたんだろうって思ってさ、でも、どうもそういう風でもない。

・・・で 結局、病院に行って、看護婦に会って話したらさ、その看護婦が言うんだよ。


『一時間ほど前、それらしいおばあさんが、亡くなられました。』って・・・。」


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・・・コンビニで、警官とオーナーとのこの話を聞いてしまったために、彼は、家への帰り道を 変えて 遠回りして 帰って 来ました。



私も時々、その病院の前を通る事があるのですが、やはり夜遅い時には、この話を思い出して、怖い 思いを する事が あります。


通り道に面した 病院の一番端の地下に、霊安室があることをつい考えてしまうから・・。




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