これからお話しする事は、私や友人が実際に体験した事や、聞いた事ばかりです。

私には、霊感はありません。だから、何の前兆もなくそれは起きるのです。

信じるとか信じないとか、ウソとか本当とか、そんな事を論じても意味はありません。

だって現実に起こってしまった事なのですから・・・・。




第七話 :  白い女



よく何か変な影の様なものを見る・時にはハッキリと顔の表情まで見える・またそれとは反対に、全然見た経験がない・・・というように、世の中は「見える人」と「見えない人」に、分かれると 言いますが、この 私は「見えない」方に 属する 人間です。

----さて、これからの 話は、「よく見る」人・・・。




はっはっはっ・・・。

息を 切らして、幸夫が 階段を 駆け上がって きた。


「悪い、悪い。 遅れた。」

「遅いっ。 みんなとの 待ち合わせまで、あと、30分 しかないじゃん。」

麻子は 不機嫌そうな 顔をしながら、鞄を 幸夫に 手渡した。

「おーよ。 急いで 行こ。」



二人は、今日から 一週間、軽井沢にある 大学の 寮に、サークルの仲間と遊びに行く。

集合場所までは、電車で20分。M駅の前に集合して、車で行くことになっているのだ。



麻子の 家から、駅までは わずか3分ほど。その駅への道を、二人は 早足で歩いていく。

道幅、3メートル弱のそう広くない道で、途中に小さな稲荷がある。それを、過ぎて先を 左方向に 折れて行った所に 駅が あるのだが・・・。



季節は 初冬、寒くなり始めて いた。

夜の十時に集合して、車で軽井沢へ・・。翌日は朝から、目一杯遊ぼうという訳だ。



稲荷を過ぎたあたりで、今まで遅れた言い訳をしていた幸夫が、突然無口になった。

麻子は、口をとがらせて、ソッポを向いて歩いていたのだが、幸夫が、黙り込んでしまったので、振り返る。


「どうしたのよ。 何にも、言わなくなっちゃって・・・。」

それには 答えず、幸夫は、麻子の 腕を 取って、ますます 早足に なった。

「ねぇ、どうしたの?」

「いいから、歩け。」

「えぇ〜・・・。」

半分 引っ張られるように、麻子は 歩く。



駅まで 来ると、幸夫が 緊張に 引きつった顔で

「お前、怖がりだから、言わなかったけど、俺、さっき 心臓 止まるかと思った。」

「何でよ。・・・ ?」



「左に 折れる 手前に、電信柱が 立ってるだろ ?

その 電信柱の 横に、白い 着物で 顔も 何もかも 真っ白な女が 立ってたんだ。」




「え〜? あそこ 薄暗いから、そう 見えただけ じゃないの ?」

「違うよ。 だって、その女、半分 透けてたんだぜ。」



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これは、まぎれもなく実録 です。



その女と彼の距離は、1メートルもなかったそうで、女の顔の表情の細部までハッキリ見えたと、彼は 断言したのです。

「白い女」は、うつむき加減で、手をダランと下げ、後ろの塀が透けて見えていたと・・。




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