「天才の思いで」




第一回:  序


 先生、覚えていらっしゃいますか。僕が初めて先生にお会いした日のこと・・・・。 イガグリ頭で土人のように、真っ黒に日焼けした僕を見て「漫画家志望の奴にしては、珍しいな。」なんて言われました。

今考えてみると、その頃の漫画家志望者は長髪で、青白くて、スケッチブックをかかえた、格好だけ芸術家ぽい奴らばっかりでしたもんね。み〜んな、夏の蝉みたいに、あっという間にいなくなりましたけど。

 先生の「漫画家入門」の本を読んだのが、中学生の時でしたが、それ以来どれほど先生に憧れたか・・。

その、憧れの先生が、僕の目の前にいる。同じ空気を吸っている。否、先生の吐いたかもしれない空気を、僕が吸っているかも知れない。そう感じるだけで、クラクラしました。

 その時の先生の格好は、パジャマで、目が真っ赤で、髪の毛は爆発していましたね。でも、その姿を見て、ホッとしました。石森章太郎も人間だった。そう思ったんです。

先生は、僕の下手くそなギャグまんがを丁寧に見て下さいました。

 「竹庵医院」というタイトルで、藪医者が病院を流行らせるために、自分で病人やけが人を 作ろうとして、自分自身が入院してしまうというストーリーでした。

先生はいろいろアドバイスして下さいましたが、何にも覚えちゃいません。覚えているのは、先生の爆発頭と、じゃがいものような顔と、短くて丸い魔法の指だけです。

 その後、先生が絵を描くところを何度も見ましたが、本当に先生の指は不思議でした。何もないところから、仮面ライダー・ロボコン・キカイダー・ОО9が飛び出してくるんです。

     感動しました。

 先生はまさに「天才」でした。

そんな先生との思い出を、これから少しずつ、ここに、書き留めていこうと思います。僕だけの先生の思い出です。 いいでしょ、先生。

                            続く




  第二回:「僕の出発点」


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