「天才の思いで」




第八回:「出会い」


 僕が、先生の 家を 訪ねて来たのが、朝の 十時頃だった。 いつの間にか、昼の 一時を過ぎている。 ドキドキと イライラが 混ざってきた。 そんな時だった。 背中の方で、ガチャッ ! と 音がして・・・

   怪物が 現れた。

「ん ? どうしたの ?」

「山田 ゴロです。 岐阜から 来ました。」

それが、僕と 石森先生との 最初の 言葉だった。 先生の頭は、まだ 起きた ばかりで 大爆発 していた。 目は 真っ赤だ。 先生は、僕の漫画を ぱらぱらと 見てくれた。そして、何かしら アドバイスを してくれている。 しかし、僕の 耳には 何も 伝わってこない。 今、この場の この光景が 信じられないのだ。

「地に 足が つかない。」・・・とは、こういう コトだろう。

「しかし、お前は 漫画家 らしく ないな。」・・・と、先生に 言われて、

「エッ ?  どこが ?」・・・・と、自分の 体を 見た。 なるほど・・・今 考えると ソウかも 知れない。

 当時の 僕は、丸坊主で 真っ黒に 日焼けして、筋肉も リュウリュウとしていた。自慢じゃないが、ケンカに だって 負けた事は ない ! ( 自慢 ) ところが、描いているのは ギャグマンガだ。

 先生との 初めての 会話・・・・。 何も 憶えていないと 以前に 書いたけれど、たった一言、憶えている言葉がある。

   「また、おいで。」

 あの 夏は 忘れられない。 たった 一日で 始まって、たった 一日で 終わってしまった 夏・・・・・。

                            続く




 第九回:「卒業と 上京」


→とびらへ