「天才の思いで」




第十回:「一年目」


 山本氏に 車に 乗せられ、着いた所は 東京でも クソ田舎の 清瀬市 東久留米 ( 東久留米の方、ごめんなさい ) という 所だった。

「ゴロちゃん、今日から ここで 頑張れよ。」

「はい !」・・・・とは いうものの、ここは どこなの ?

「ジョーさん、連れてきたよ。この子を頼む !」

「おう。」

目の前に もの凄い 男が 現れた。とにかく、ごっつい 人だ。

「山田ゴロです。よろしく お願いします。」

「中城 健太郎です。よろしくね。」

「エッ ?! エッ ! 中城 健太郎って・・・あの 「キックの 鬼」の !

 その頃、キックボクシングが 流行っていて、ヒーローは チャンピォンの 沢村 忠 だった。 中城先生は、その 沢村 忠を 主人公にした マンガ・「キックの 鬼」を 描いていた先生だ。

 こうして 僕は、とにかく 住む 所を 見つけられた。 中城 先生については また いずれの 機会にするが、この先生に 巡り会い 一緒に 過ごした 一年間が、僕の 漫画家としての すべての いしずえに なっている。 それが どんなに 充実した 一年だったか・・・・・。

 中城先生の ところでの 一年間。 僕は それこそ 脇目も 振らず アシスタントとして 絵を描き続けた。 厳しく、やさしく プロ根性という ものを 教えて下さったのは、中城先生だった。 僕が 先生の ところを 出てから、「紅の 挑戦者」とか 「カラテ地獄変」など、先生は 次々と ヒット作を 描かれたが、今は 故郷の 四国・高知で 元気に していらっしゃるとか・・。

 中城先生の ところに 来て 約一年経った頃、僕は 悩んでいた。 もっと 他の 世界を 見てみたい。自分は 一体 どんな レベルなんだろう・・・。 今風な 言い方を すれば、自分の アイデンティティを 確かめたく なっていたのだ。 それから 僕は 暇を 見つけては、1コマ・2コマと 自分の マンガを 描き始めた。そして、30ページに なった頃、僕は 意を 決した。

                            続く




 第十一回:「再び・・・」


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