「天才の思いで」




第二十回:「お仲人」


 みよちゃんを連れて、先生ご夫妻とボーリング場で、お会いすることになった。 先生のアシスタントのためのボーリング大会が、行われていたのだ。

「どうした?」

「け・けつこんいたいんです !」・・・・・・「け・結婚したいんです。」

「まあまあ、おけつち。」・・・・・・・・・・「まあまあ、おちつけ。」

「おけっています。よく、かんがえってのとこですから・・。」

・・・・・・・・・「落ち着いています。よく考えてのことですから。」っと、まいあがったまま、先生に、お仲人をお願いした。

「うん、いいよ。それで、いつなんだ?」

「まだ、何も決まっていません。みよちゃんの両親にも、ぼくの両親にも、話していませんから。」

「それじゃ、そっちが決まってからもう一度会おう。その時は両親も連れておいで。」

「はい。ありがとうございます。」

 それからは、トントン拍子に話がまとまった。もちろん、いろいろなことがあったが・・、「石森先生がお仲人を・・・。」という事で、両方の両親が、折れてくれたといっても いいだろう。

 ぼくは、先生の自宅に 自分の両親を連れていった。 父も母も、緊張しているのがよくわかった。 ぼくにとって、石森先生は憧れの星だったが ぼくの両親にとっても同じだったと思う。 先生自身は、気さくで、誰にでも、会うことを 拒まない人だったのだが、状況がそれを許さなかった。 私的なことに時間を使えないのだ。 そんな先生が、時間をとり、ぼくの両親を歓待して下さったことを感謝している。

 帰りの道々、父はぼくにこう言った。

「やさしい人やなぁ、ゴロ。これからも、石森先生のために よう働け。出来ることを一生懸命して、先生にもっともっと活躍して貰え。そうする事が、いずれ お前のものになって帰ってくる。」

「先生のような、人格者になれ。マンガのことは、よう分からんが、ああいうお人やから、人々を感動させられるんやと、わしは思う。」

そんなことを、ずっと話していた。

 ぼくらの結婚式は、赤坂にあるホテル・ニュージャパンで行うことになった。

そう、あの、火事で燃えてしまった ホテル・ニュージャパン だ。

                            続く




 第二十一回:「当日」


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