石森プロから、成井紀郎君がスタジオに行くことになった。 スタジオとは、先生の仕事場のことで、つまりアシスタントに空席ができたというわけだ。 次は、ぼくの番だ。 ある日、加藤マネージャーに呼ばれた。 「アシスタントに行くかい ?」 「すみません。ぼくはこのまま独立したいと思います。」 なんということか。 先生に憧れ、やっと夢が現実になるというのに、ぼくは、断ってしまった。 いや、断らざるを得ない状況だったのだ。 まず、結婚をしている。 すでに、連載をもっていた。 「そうだね。それがいいね。」 ・・・・・・。 とうとう石森プロを辞める日がきた。 しかし、それは先生と、加藤マネージャーの計らいだった。 その頃のぼくの仕事は、雑誌の連載、絵本等々。更に石森プロの雑務だった。 特に、描くということが多く、一ヶ月に多いときには200ページを越えることもあった。 睡眠時間も一日に3時間。3日連続の徹夜も、何度かあった 。しかし、プロにいる限りは、 すべて給料の内だ。 それに・・・・こどもができた。 「プロの仕事を、引き続きやってもらおう。」 「えっ !」 「給料じゃなくて、これからは、原稿料だよ。」 「はい。よろしくお願いします !」 ぼくは、プロへ通わなくなった。 続く |
第二十三回:「病気」 |
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